年に一度、九州大学で研究されている照屋輝一郎助教をはじめ、全国から臨床研究に参加されている医師が集まり症例報告と最新研究報告が行われます。
照屋輝一郎助教から、様々な低分子化フコイダンの効果についての報告があったので、3回に分けてご報告させていただきます。
低分子化フコイダンのがん細胞多剤耐性効果について
がんに対する化学療法の大きな課題として薬剤耐性が挙げられます。
薬剤耐性には治療開始から抗がん剤が効かない自然耐性と、治療を続けていくうちに有効であった抗がん剤の効果が無くなってしまう獲得耐性があります。
がん細胞が耐性を持つ=薬を覚えるということであり、耐性を持ってしまうと同じ薬剤は使っても意味がないため投与中止となります。
今回は、薬剤耐性で有名な多剤耐性遺伝子であるMDR1に関して検証が行われました。
抗がん剤を投与すると、細胞はMDR1を発現し抗がん剤を体外へ排出してしまいます。
耐性(本研究ではドキソルビシンの耐性を持つK562細胞)を持ったがん細胞に同じ薬剤(ドキソルビシン)の投与を続けるとMDR1はさらに増加します。
しかし、低分子化フコイダン処理時にはMDR1が有意に低下を示しました。
この結果から低分子化フコイダンはMDR1の発現を抑える効果がみられたため、うまく扱えば多剤耐性を抑え、さらに耐性が出ている細胞に対してもそれを抑える効果があるのではないかという足がかりになるようなデータの確認ができました。
また、低分子化フコイダンが薬剤耐性を持つK562細胞の耐性を落とせるかという実験(薬剤耐性抑制効果の検証)も行われました。
※Rhodamine123というフローサイトメトリーの実験で使われる蛍光試薬を使用
一つは耐性を持ったK562細胞に蛍光試薬処理、もう一つは低分子化フコイダン処理したK562細胞の耐性株に蛍光試薬処理をして蛍光試薬が排出される様子が比較されました。
その結果、低分子化フコイダン処理をしたものの方が、低分子化フコイダン処理していない場合よりも蛍光試薬保持量が高く、有意な差が生じました。
このデータにより、低分子化フコイダンには耐性を持ったK562細胞の多剤耐性を抑制する効果があると示唆されました。
次の記事では、がん幹細胞に対する低分子化フコイダンの効果について、まとめてまいります。