日本人女性のがんの発生部位別の罹患率は1996年から乳がんが第1位になっています。日本人女性の20人に1人が一生のうちに乳がんにかかるといわれております。乳がんになる年齢は比較的若い方が多く、好発年齢は40~50歳です。乳がんの約90%は、乳管から発生し、乳管がんと呼ばれます。小葉から発生する乳がんが約5~10%あり、小葉がんと呼ばれます。
乳がんの5年生存率は、病期(ステージ)と全身状態により異なりますが、1期では 約98%、2期では 約92%、3期では約68%、4期では 約32%となります。
乳がんでは、原発腫瘍の大きさ(T:primary Tumor)、リンパ節転移の有無(N:regional lymph Nodes)、他臓器への転移の有無(M:distant Metastasis)で病期(ステージ)が決まります。これをTNM分類といいます。また、乳がんではTNM分類以外に、ホルモン受容体(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体)とHER2など乳がんの全身療法の治療方針を決定するうえで不可欠な因子であるため、すべての浸潤性乳がんで検査を行い総合的に検討して治療方針を選択します。
乳がんの病期分類(ステージ)
■乳がんのTNM分類以外の検査項目
●ホルモン受容体(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体)
乳がんの60~70%は、女性ホルモンの影響を受けて、分裂や増殖をします。エストロゲンで増殖する陽性タイプの乳がんに対してはエストロゲンの働きを抑えるホルモン療法の効果が期待できます。対象となるのは、エストロゲン受容体かプロゲステロン受容体のいずれかが陽性の場合です。ホルモン受容体陰性の場合は効果がありません。
●HER2遺伝子
HER2は、細胞の生産にかかわるヒト上皮細胞増殖因子受容体とよく似た構造をもつ遺伝子タンパクです。HER2タンパクは、正常な細胞にもわずかに存在し細胞の増殖調節機能を担っていると考えられていますが、過剰に発現したり活性化したりしてがん細胞の増殖や悪性化に関わることがわかってきました。HER2タンパクの過剰な存在は、乳がんの予後因子の1つで、特にリンパ節にがんが転移している場合にHER2が陽性だと、再発の危険性が高くなるといわれています。
陽性、陰性ついては、HER2タンパクの過剰発現を調べるIHC法やFISH法により判断されます。HER2遺伝子増幅タンパク過剰発現の状況を確認することは必要不可欠であり、その検査や判定方法が治療方針を大きく左右します。
●Ki-67
Ki-67は、がんの細胞増殖進行スピードを示すマーカーで、病院によって病理結果がKi-67、または、MIB-1で示される場合があります。乳がん細胞を免疫組織染色してKi-67という核内タンパク質が染まる細胞は増殖期にあるもので、一般的に14%を超えると腫瘍の活動性として増殖能力が高いことを示します。Ki-67が高値であるということは、悪性度が高く、再発のリスクも高まり予後が悪いと考えられています。
しかし、Ki-67の測定値は病理医間で相当なばらつきのあること、測定方法自体が統一されていないこともあって、絶対的なものとしてはまだ捉えられていないのが現状です。
乳がんのサブタイプ
乳がんには、比較的おとなしいものから、増殖が活発なものまで様々なタイプがあり、タイプによって再発のリスクが異なります。乳がんの初期治療ではそれぞれのタイプに応じて、適切な治療を実施し、効果的な治療法が推奨されています。乳がんのタイプをホルモン受容体やHER2が陽性か陰性か、がん細胞の増殖能力が高いかどうかによって、5つのサブタイプに分類し、サブタイプ別にどのような薬物療法が推奨されるのか検討して治療方針が決められています。
①ルミナルAタイプ(ホルモン受容体陽性、HER2陰性)
ホルモン受容体陽性乳がんのルミナルタイプは、乳がん全体の60~70%程度を占めるもっとも多いタイプです。ルミナルAは増殖能力の低いタイプに分類されます。ホルモン受容体をもつ乳がんは、女性ホルモンをエサとして増殖するため、ホルモン療法が推奨されます。なお、リンパ節転移が4個以上ある場合など、がん細胞の悪性度が高い場合は再発リスクも高くなるため、抗がん剤治療の追加が考慮されます。
②ルミナルBタイプ・HER2陰性(ホルモン受容体陽性、HER2陰性)
ルミナルAタイプと同様にホルモン療法が効果的です。ルミナルAタイプに比べて増殖能力が高いため、多くの場合ホルモン療法に加えて抗がん剤治療も行います。抗がん剤治療を実施する場合にどのような組み合わせが良いかについては、ホルモン受容体の程度や、再発のリスクなどを判断して選択します。
③ルミナルBタイプ・HER2陽性(ホルモン受容体陽性、HER2陽性)
ホルモン受容体陽性でHER2陽性のタイプは増殖能力が高く、ホルモン受容体とHER2のどちらも陽性であるため、ホルモン療法と分子標的薬治療ともに効果が期待できます。また、分子標的薬治療を行う場合には、抗がん剤治療を併用することが推奨されています。
④HER2陽性(ホルモン受容体陰性、HER2陽性)
ホルモン受容体陰性で、ルミナルタイプでないHER2陽性の乳がんは、乳がん全体の10%程度を占めます。ホルモン受容体をもたないため、ホルモン療法の効果は期待できません。分子標的薬治療と抗がん剤治療の併用が推奨されています。
⑤トリプルネガティブ(ホルモン受容体陰性、HER2陰性)
トリプルネガティブと呼ばれているサブタイプで、攻撃の標的となるホルモン受容体とHER2タンパクのいずれも持たないため、抗がん剤治療を行います。現在、どのような組み合わせがもっとも効果が高く安全に行えるか、様々な臨床研究が実施されています。
乳がんの標準治療
乳がんは、明らかな遠隔転移がみられない段階でも、全身にがん細胞が広がりやすいがんです。そのため、浸潤がんとなった時点で全身病として治療を行うべきと考えられています。手術や放射線療法などの局所療法で大きながん組織を取り除き、検査では見えないような小さながん細胞は、薬物療法で治療するのが乳がんの基本的治療になります。
■乳がんの外科手術
乳房温存手術
病変を含めて乳腺を部分的に切除します。乳房温存ができる条件は、通常、しこりが3cm以下、画像検査でがんが乳管の中に広範囲に広がっていない、放射線があてられるなどです。しこりが小さくても広範囲にがんが広がっていることが確認された場合は温存できないこともあります。
センチネルリンパ節生検
手術前にわきのリンパ節への転移がないと予想される場合が対象で、手術中にわきのリンパ節を一部生検します。転移の有無を検査して、転移の無い方や転移が非常に少ない方は他のリンパ節を切除せずに残します。
腋窩郭清手術
手術前にわきのリンパ節に転移を認めた場合や、手術中にセンチネルリンパ節に一定量以上の転移を認めた場合は、わきのリンパ節を切除します。
乳房切除手術
乳房全体をがんとともに摘出する手術です。手術前の画像診断でしこりが大きい場合や、周囲への拡がりが広いことが予想される場合が対応となります。
■乳がんの放射線療法
乳がんの治療で放射線治療が最も多く使われるのは、乳房温存手術との組み合わせです。1期、2期の早期乳がんだけでなく、0期の非浸潤がんでも、乳房温存手術後の放射線治療は、原則必要な治療法と考えられています。乳房温存手術に放射線治療を併用することで、温存した乳房内の再発を減らすことができます。また、がんが大きくて手術ができない場合に、がんを小さくする目的で行うこともあります。 このほか、手術部の再発やリンパ節再発、骨や脳転移の治療にも放射線治療は用いられます。
■乳がんの薬物療法
乳がんの薬物療法にはホルモン療法、化学療法、分子標的薬治療などの種類があります。その中から乳がんの性質、病状に応じて、手術前・手術後の補助療法や転移巣に対する治療として行われます。
■ホルモン療法
乳がんの約70%は、女性ホルモンの影響を受けて増殖します。エストロゲンが乳がん細胞の中にある受容体と結びつき、がん細胞の増殖を促します。ホルモン療法とは、乳がんがエストロゲンの影響を受けて増殖するという性質を利用した治療です。一般的には、ホルモン療法剤を用いてエストロゲンの産生を抑えたり、エストロゲンが受容体と結合するのを阻害することによって、がん細胞の増殖を抑制します。
乳がん細胞の増殖を促進するエストロゲンが作られる場所は、閉経前と閉経後で異なります。閉経前では、主に卵巣でエストロゲンは作られますが、閉経後は、アンドロゲンという男性ホルモンが副腎から分泌され、脂肪組織内に存在しているアロマターゼの働きによって少量のエストロゲンが作られ続けます。
閉経前 | LH-RHアゴニスト製剤 | 注射 | ゾラデックス、リュープリン |
---|---|---|---|
抗エストロゲン薬 | 内服薬 | フェマーラ、ノルバデックス、フェアストン | |
閉経後 | アロマターゼ阻害薬 | 内服薬 | アロマシン、アリミデックス |
抗エストロゲン薬 | 内服薬 | フェマーラ、ノルバデックス、フェアストン |
■化学療法
化学療法とは抗がん剤による治療のことで、広い範囲のがん細胞を攻撃する治療法です。 細胞分裂のいろいろな段階に働きかけて、がん細胞を死滅させる効果があり、乳がんは比較的化学療法に反応しやすいがんとされています。がん細胞の増殖の過程は、大きく分けてDNAが合成される時期と分裂する時期があり、抗がん剤によって標的となる時期が異なります。数種類の抗がん剤を併用するのは、標的が違う薬を組み合わせることで、がん細胞の増殖を抑える効果がより高くなるからです。
アンスラサイクリン系薬剤 | アドリアシン、ファモルビシン、イリノテカン |
---|---|
タキサン系薬剤 | タキソール、タキソテール、アブラキサン、ナベルビン、ハラベン |
アルキル化薬 | エンドキサン |
代謝拮抗薬 | 5-FU、UFT、ゼローダ、TS-1、ジェムザール、メトトレキサート |
白金錯体 | カルボプラチン |
CMF療法 | エンドキサン+メトトレキサート+5-FU |
---|---|
AC療法 | アドリアシン+エンドキサン |
EC療法 | エピルビシン+エンドキサン |
CAF療法 | エンドキサン+ファモルビシン+5-FU |
FEC療法 | 5-FU+エピルビシン+エンドキサン |
TC療法 | タキソテール+エンドキサン |
AC→T療法 | ファモルビシン+エンドキサン→タキソテール |
■分子標的薬
従来の抗がん剤とは異なり、がん細胞の表面にある特定のたんぱく質をターゲットとして細胞増殖に関わる分子を阻害することで、抗がん作用を示すのが分子標的薬です。従来の抗がん剤と比較して副作用が少ないことが特徴です。HER2タンパク陽性の乳がんであればハーセプチン、タイケルブ、パージェタという分子標的薬を抗がん剤と組み合わせて使用することで、より高い治療効果が期待できます。ただし、HER2陽性乳がんは全乳がんの20~25%程度です。
HER2陰性乳がんでは、タキソールにアバスチンを併用することにより効果が増強します。また骨転移に対しては、これまで転移に伴う病的骨折を予防する目的でゾメタが用いられてきましたが、ランマークという分子標的薬も有効であることがわかっています。
■乳がんの新薬情報
トラスツズマブエムタイシン
2013年9月に承認されたトラスツズマブエムタイシンは、ヒト化モノクローナル抗体のトラスツズマブにチューブリン重合阻害薬のエムタンシン(DM1)を安定性の高いリンカーで結合した抗体薬物複合体です。DM1の親化合物であるメイタンシンは強力な細胞傷害性を有する一方で、安全域の狭さから臨床応用には不適とされていました。しかし、トラスツズマブとの結合により腫瘍選択的にDM1の送達が可能となり、薬物有害反応を最小限に抑えながら抗腫瘍効果を発揮することが可能となった新しい薬剤です。
乳がんと薬物療法(ホルモン剤・抗がん剤)
乳がんでは、ホルモン剤や抗がん剤、分子標的薬など、それぞれのサブタイプによって薬物療法が単独、もしくは併用で行われます。ホルモン受容体(ER、PgR)、HER2タンパクが陽性か陰性か、ステージなどを総合的に判断し治療方針が決められます。
薬物療法の選択肢が他のがんに比べて多いと思われている乳がんですが、全ての薬が使用できる乳がんのあれば、抗がん剤のみのタイプの乳がんもあります。しかし、ホルモン剤、抗がん剤、分子標的薬が全て使えたとしても安心してはいけません。限りある薬剤の効果が出なければ、治療継続も困難となります。
乳がんの薬物療法をスムーズに行うためには、QOLを高い状態で保ち、がんが薬を覚えて効果が出なくなる薬剤耐性を防ぐことが重要です。そして、治療中の副作用を最小限に抑えて、治療を予定通り行い、寛解させなければなりません。その唯一の方法が、低分子化フコイダンと乳がんの薬物療法を併用した「統合医療」なのです。
■関連項目
お問い合わせ先
NPO法人日本統合医療推奨協会では、フコイダン療法やがん統合医療についての無料相談窓口を設置しております。臨床に基づいた飲用方法、がん治療についてのお悩みがございましたら、お気軽にご相談下さい。
お電話が繋がらない場合は、氏名・ご連絡先・お問い合わせ内容をご入力の上info@togoiryou.comまでメール送信下さい。
資料もご用意しております。
フコイダン療法についての無料レポートをご用意しております。お電話または資料請求フォームよりご請求下さい。