非ホジキンリンパ腫はホジキンリンパ腫よりも発症数が多く、悪性リンパ腫全体の90~95%を占めます。リンパ球はB細胞、T細胞、NK細胞に分類されます。非ホジキンリンパ腫は、がん化しているB細胞リンパ腫とT/NK細胞リンパ腫に分かれ、そこからさらに細分化されます。
こちらのページでは、特に罹患数の多い濾胞性リンパ腫(FL)とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を中心にご紹介します。
濾胞性リンパ腫とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫
●濾胞性リンパ腫(FL)
濾胞性リンパ腫は、B細胞リンパ腫ががん化することで発症します。
基本的には年単位でゆっくりと進行するタイプですが、途中から週・月単位で速く進行するタイプに性質が変化することもあります。
●びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫の中でも最も多い病型です。白血球の一種であるリンパ球のうちのBリンパ球ががん化することで発症します。
病気の進行が速いアグレッシブリンパ腫に分類されます。
悪性リンパ腫の主な症状 ※発症部位によって症状は異なります。 |
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・原因不明の体重減少 ※B症状 ・38度以上の原因不明の高熱 ・就寝中の大量の寝汗 ・リンパ節の腫れやしこり ・内臓の一部の腫れや圧迫 etc. |
※B症状と呼ばれる全身症状で、病期(ステージ)診断で考慮されます。
濾胞性リンパ腫とびまん性大細胞型大細胞型B細胞リンパ腫の病期
ステージは濾胞性リンパ腫とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫ともに1~4期の4つに分類されます。1~2期を限局期、3~4期を進行期といい、限局期と進行期で治療方法も異なります。
濾胞性リンパ腫の治療
濾胞性リンパ腫の治療は限局期(ステージ1~2)、進行期(ステージ3~4)に分けて治療方法が決められます。
進行がゆっくりなタイプはすぐに治療を開始せず、無治療で経過観察となる場合もあります。
《初発の濾胞性リンパ腫 治療の流れ》
■限局期(1~2期)
病変部分への放射線治療が一般的に行われます。ただし、B症状がある場合や腫瘤が大きい場合は予後が悪いと予想され、進行期に準じた治療が行われます。
■進行期(3~4期)
進行期では、がん細胞の量や症状を踏まえた上で治療方針が決められます。
低腫瘍量の場合、病気の進行度を慎重にみながら経過観察して、治療開始を考慮することがあります。
一方、高腫瘍量や進行が速い場合は薬物療法が行われます。一般的には抗CD20抗体を抗がん剤と併用する薬物療法です。
治療効果が得られた場合、さらにがん細胞を減らして再発リスクを減らすために抗CD20抗体を継続的に投与する維持療法が行われることもあります。
《代表的な抗CD20抗体併用療法》
使われる薬剤 | |
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R-CHOP療法 | リツキシマブ(リツキサン)、シクロホスファミド(エンドキサン)、ドキソルビシン(アドリアシン)、ビンクリスチン(オンコビン)、プレドニゾロン(ステロイド薬) |
R-CVP療法 | リツキシマブ(リツキサン)、シクロホスファミド(エンドキサン)、ビンクリスチン(オンコビン)、プレドニゾロン(ステロイド薬) |
BR療法 | ベンダムスチン(トレアキシン)、リツキシマブ(リツキサン) |
2018年にはオニヌツズマブ併用化学療法のオニヌツズマブ-CHOP療法、オニヌツズマブ-CVP療法、オニヌツズマブ-B療法も承認されました。
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫も限局期(ステージ1~2期)、進行期(ステージ3~4期)に分けて治療が決められますが、いずれも複数の抗がん剤を組み合わせたR-CHOP療法が標準治療として定められています。
■限局期(1~2期)
長径10cm以上の大きな腫瘤が無い場合、基本的にはR-CHOP療法を3コース行い、その後に病変部位へ放射線治療が行われる場合があります。
10cm以上の大きな腫瘤がある場合は、R-CHOP療法は6~8コース行われます。
■進行期(3~4期)
進行期では、R-CHOP療法が標準治療として定められています。
その後、状況によって二次治療に進みます。
R-CHOP療法 | リツキシマブ(リツキサン)+シクロホスファミド(エンドキサン)+ドキソルビシン(アドリアシン)+ビンクリスチン(オンコビン)+プレドニゾロン(ステロイド薬) |
悪性度別の非ホジキンリンパ腫のタイプ
進行がゆっくりな低悪性度の悪性リンパ腫
■濾胞性リンパ腫(FL)
濾胞性リンパ腫については、濾胞性リンパ腫とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病期、濾胞性リンパ腫の治療を参考にしてください。
■MALTリンパ腫(マルトリンパ腫)
MALTリンパ腫は胃原発の胃MALTリンパ腫と胃以外の胃以外のMALTリンパ腫とに分類されます。
胃MALTリンパ腫は限局期(ステージ1~2)のピロリ菌陽性の場合はピロリ菌除菌療法、限局期でピロリ菌陰性の場合は放射線療法か薬物療法が行われます。
進行期の胃MALTリンパ腫、ステージ1以外の胃以外MALTリンパ腫の治療は進行期の濾胞性リンパ腫の治療に準じて行われます。(濾胞性リンパ腫の治療を参考にしてください。)
ステージ1の胃以外MALTリンパ腫は状況に応じて外科切除、放射線療法、無治療経過観察が選択されます。
月単位で進行する中悪性度の悪性リンパ腫
■びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫については、濾胞性リンパ腫とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病期、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療を参考にしてください。
■末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)
末梢性T細胞リンパ腫は下図の4つのタイプが発症割合の高いタイプとして知られています。
タイプ | 特徴 | 治療方法 |
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ALK陽性未分化大細胞型リンパ腫 (ALK陽性未分化大細胞型リンパ腫) | ・ALK融合遺伝子陽性 ・末梢性T細胞リンパ腫の中でも比較的予後良好 ・若年男性に多い | 多剤併用化学療法(CHOP療法)±放射線 |
ALK陰性未分化大細胞型リンパ腫 (ALK陰性未分化大細胞型リンパ腫) | ・ALK陽性未分化大細胞型リンパ腫とがん細胞の形態は同様だが、ALK融合遺伝子は陰性 | ・多剤併用化学療法(主にCHOP療法) ・臨床試験への参加(標準治療が確立していないため、) |
AITL (血管免疫芽球性T細胞リンパ腫) | ・高齢者の発症率が高い ・ほとんどの患者さんで全身のリンパ節の腫れが見られる | ・多剤併用化学療法(主にCHOP療法) ・臨床試験への参加(標準治療が確立していないため、) |
PTCL-NOS (非特定型) | 末梢性T細胞リンパ腫のうち他のどのタイプにも分類されない病気の集合 | ・多剤併用化学療法(主にCHOP療法) ・臨床試験への参加(標準治療が確立していないため、) |
最も進行が速い高悪性度の悪性リンパ腫
■成人T細胞白血病リンパ腫
成人T細胞白血病リンパ腫はHTLV-1というウイルス感染が原因で起こりますが、感染した人が発症する確率は約5%とされています。治療方法としては、多剤併用化学療法(VCAP-AMP-VECP療法が最も推奨される)を行い、治療効果が得られ、かつ年齢・全身状態・主要臓器機能に問題がない場合、適切なドナーが見つかった場合は同種造血幹細胞移植が検討されます。
■バーキットリンパ腫
バーキットリンパ腫は非ホジキンリンパ腫のうち、成人では約1~2%ですが、小児では25~40%を占め、若年層の特に男性に多く発症する傾向があります。
初回治療では多事併用化学療法が推奨されるが、どのような薬剤の組み合わせが有効であるかなど、それぞれの優劣は現時点で不明です。
推奨される治療レジメン | 使われる薬剤 |
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Modified COPOX-M/IVAC療法±R | シクロホスファミド(エンドキサン)+ビンクリスチン(オンコビン)+ドキソルビシン(アドリアシン)+メトトレキサート+イホスファミド(イホマイド)+エトポシド(ラステット)+シタラビン(キロサイド)±リツキシマブ(リツキサン) |
R-hyper-CVAD療法 | リツキシマブ(リツキサン)+シクロホスファミド(エンドキサン)ビンクリスチン(オンコビン)+ドキソルビシン(アドリアシン)+デキサメタゾン(デカドロン)+高用量メトトレキサート+高用量シタラビン(キロサイド) |
上図の高強度の治療レジメンが施行困難な場合に考慮されるレジメン | 使われる薬剤 |
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DA-EPOCH-R療法 | エトポシド(ラステット)+プレドニゾロン(プレドニン)+ビンクリスチン(オンコビン)+シクロホスファミド(エンドキサン)+ドキソルビシン(アドリアシン)+リツキシマブ(リツキサン) |
■リンパ芽球性リンパ腫/急性リンパ性白血病
リンパ芽球性リンパ腫と急性リンパ性白血病は同じ種類のがんで、急性症状が現れるものを急性リンパ性白血病、リンパ節などで増殖するものをリンパ芽球性リンパ腫といいます。
治療はRh(フィラデルフィア)染色体が陽性か陰性かでまずは分類されます。Ph染色体陽性の65歳以下の若年者は分子標的治療薬「TKI(チロシンキナーゼ阻害薬)」+多剤併用化学療法、65歳以上の高齢患者さんにはTKI+ステロイド療法が行われます。
Ph染色体陰性のおおむね30歳までの若年成人であれば、小児がんで定められている治療方法が推奨されます。それ以上の一般成人や高齢者の場合の標準治療は確率されておらず、まずは完全寛解を目指した化学療法である寛解導入療法が推奨されます。
参考文献:日本血液学会造血器腫瘍ガイドライン
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