大腸がんは、どの病期(ステージ)であっても切除可能と判断されたら手術が選択され、根治を目指せる可能性もあります。
初期の大腸がんでは内視鏡治療、浸潤の深いステージ1~3では手術、ステージ4では状況に合わせて手術または手術以外の治療方法が選択されます。
こちらのページでは、各治療方法について説明しております。
内視鏡治療
内視鏡治療とは、内視鏡を使って大腸の内側から病変を切除する方法で、ステージ0~一部のステージ1のがんまでが対象となります。内視鏡で切除した病変は病理検査を行い、がんの性質や広がりの程度を確認します。病理検査の結果、リンパ節への転移などの危険性があるとなった場合は、後日に手術が必要となることもあります。
内視鏡での切除方法は以下の2種類があります。
(1)内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)
ポリペクトミーはキノコのような形に盛り上がっている茎がある病変に対して行われる切除方法です。内視鏡の先端に輪状の細いワイヤーを出し、それを病変の茎に掛けて締め、高周波の電流で焼き切ります。
(2)内視鏡的粘膜切除術(EMR)
EMRは病変に茎がなくワイヤーを書けにくい時に行われます。病変粘膜を吸引などでポリープ状に変形させてからワイヤーをかけて高周波の電流で焼き切ります。
(3)内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
EMRで切除が難しい大きな病変に対してはESDで切除が行われます。EMRと同じように病変を浮き上がらせてから切除したい部分を高周波ナイフで徐々に切開し、はぎ取ります。
手術
大腸がんの手術は、がんが発生している部分を含む腸管の切除と転移している可能性のある範囲のリンパ節も同時に切除を行い、残った腸管同士をつなぎ合わせます。
また、がんが周囲の臓器まで及んでいる場合、可能であればその臓器も同時に切除します。
まだまだ開腹手術がですが、腹腔鏡下手術やロボット手術も行われるようになってきました。しかし、腹腔鏡下手術はがんの発生部位や患者さんの体格などで手術の難しさが左右されます。そして、ロボット手術は腹腔鏡下手術よりも繊細な手術操作が可能になると期待される一方で、長期的な治療成績についてはまだ十分に分かっていません。
そのため、腹腔鏡下手術やロボット手術については、メリットとデメリットを理解し、担当医としっかりと相談する必要があります。
●結腸がんの手術
結腸のどの部位にがんが発生しているかで、回盲部切除術、結腸右半切除術、結腸左半切除術、高校結腸切除術、S状結腸切除術など手術の方法が異なります。
切除の範囲はがんのある部位を中心に、両側それぞれ約10cm離れたところで大腸を切除し、リンパ節郭清を行ってから残りの大腸をつなぎ合わせます。
●直腸がんの手術
直腸がんの手術では進行度や直腸がんの部位により直腸局所切除術、前方切除術、直腸切除術、括約筋間直腸切除術から適切な術式が選択されます。直腸局所切除術と前方切除術では肛門を残すことができます。しかし、直腸がんが肛門に近い部位にできた場合は直腸切除術が選択され、直腸と肛門を切除することから、永久的に人工肛門(ストーマ)が必要となります。
近年では肛門の近くに直腸がんができた場合でも、可能であれば括約筋の一部のみ切除して肛門を残す括約筋間直腸切除術で人工肛門を避けることができる場合もあります。しかし、深達度が深ければ再発率も高くなるという報告もあるため、可能かどうかは主治医と十分な相談が必要です。
放射線治療
大腸がんの放射線治療は、手術前に局所制御率や肛門の温存率を上げるために補助的な役割で行われる化学放射線療法の他、術後に骨盤内の再発予防の目的で行われるか補助放射線治療、痛みなどのがんによる症状を和らげる目的で行われる緩和的放射線治療があります。
このように大腸がんでは根治を目的とするよりは、補助的に放射線治療が行われることが多いですが、再発時に病巣が骨盤内に限局していて再切除が難しい場合は根治を目的とした放射線治療が行われることもあります。
薬物療法
大腸がんの薬物療法は手術後の再発予防を目的とした術後補助化学療法と手術ができない切除不能進行・再発の大腸がんに対する治療を目的とする薬物療法があります。
大腸がんでは細胞障害性抗がん剤と分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬を単独、もしくは組み合わせて治療が行われます。
●薬物療法の一次治療を決めるまでの流れ
※大腸癌治療ガイドライン医師用2022年版 金原出版を参考に作成
大腸がんの薬物療法を受ける条件として薬物療法に耐えられて、肝臓や腎臓などの主な臓器の機能が保たれている、そして大腸がん以外に重い病気がないということです。
しかし、これらを満たしていない場合でも、その問題に応じた薬物療法で対応できる時は問題ありとして適応となります。
一次治療を始める前に大腸がんではMSI、RAS(KRAS/NRAS)、BRAFの遺伝子変異がないかを調べることをガイドラインでも推奨されています。(最近ではHER2検査も行われるようになってきました。)
MSIが陽性の場合はRASやBRAF遺伝子変異で陽性が出たとしても、一次治療で免疫チェックポイント阻害薬を用いることが推奨されています。MSI陰性の場合、RASやBRAF遺伝子検査の結果に関係なく、抗がん剤と分子標的薬を併用する複数の薬物療法のレジメンから治療方法を検討し、RASやBRAFなどの遺伝子検査で陽性が認められている場合、一次治療で分子標的薬単独での治療を行わなかった時に二次治療で用いることがあります。
■遺伝子検査について■
各遺伝子検査で陽性が出た場合、その遺伝子を標的とする分子標的治療薬が使えるという流れが一般的です。大腸がんでは薬物療法の前にいくつかの遺伝子変異の有無を調べ、治療方針を決める材料とします。
[RAS遺伝子検査]
大腸がんの薬物療法で用いられる薬の中に抗EGFR抗体薬という分子標的治療薬があります。この抗EGFR抗体薬はRAS遺伝子に変異のない場合(野生型)は効果が得られる可能性がありますが、RAS遺伝子に変異がある場合(変異型)は抗EGFR抗体薬の効果は期待できません。RAS遺伝子変異は大腸がん全体の約50%で確認されます。
[BRAF遺伝子検査]
大腸がんの約5%だけにBRAFの遺伝子変異があることがわかっています。BRAF遺伝子変異で陽性が出た場合、抗EGFR抗体薬に加えBRAF阻害薬やMEK阻害薬を用いた薬物療法も適応となります。
[MSI検査]
大腸がんの約3%でMSI陽性がみられており、MSI陽性の大腸がんに対しては免疫チェックポイント阻害薬が適応となります。
[その他の遺伝子]
2022年の時点でガイドライン上で定められていませんが、大腸がんでは約2~3%でHER2遺伝子変異が、約0.5%でNTRK融合遺伝子変異が確認されています。HER2陽性の大腸がんではHER阻害薬が、NTRK陽性の大腸がんではTRK阻害薬が適応となります。
●切除不能の進行再発大腸がんに対する薬物療法の例
BEV:ベバシズマブ RAM:ラムシルマブ ALF:アフリベルセプトベータ CET:セツキシマブ
PANI:パニツムマブ REG:レゴラフェニブ FTD/TPI:トリフルリジン・チピラシル
Cape:カペシタビン Pembro: ペムブロリズマブ Nivo: ニボルマブ Ipi:イピリムマブ
ENCO:エンコラフェニブ BINIビニメニチブ ENTR:エヌトレクチニブ LARO:ラロトレクチニブ
※1:BEV,RAM,AFL,CET,PANIなどの分子標的薬の併用が推奨されるが適応とならない場合は、化学療法単独で実施。
※2: CET,PANIは RAS(KRAS/NRAS) 野生型(陰性)のみ適応。
※3:IRI 不耐でなければIRIを併用するのが望ましい。
※4:FTD/TPI 単独と FRI/TPI+BEV を比較した場合、BEV を併用した時の方が全生存期間が延長。
BEV 併用の有効性はオキサリプラチン、5-FU、イリノテカンに不能となった切除不能大腸癌において示されている。
大腸がんの薬物療法で使われる薬剤と副作用への対処
大腸がんでは細胞障害性抗がん剤、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬が治療に用いられています。
使う薬剤によって出現する副作用の種類や程度は異なります。薬物療法を受ける際は、どのような副作用が起こりやすいのか、どのように対処したら良いのかを事前に確認するようにしましょう。
●細胞障害性抗がん剤
大腸がんの最初に行われる治療方法としては、下図の★の付いた複数の抗がん剤を組み合わせたレジメンに分子標的薬(セツキシマブ、パニツムマブ、ベバシズマブのいずれか1つ)を加えた治療が一般的です。
レジメン名 | 使用する抗がん剤 | 主な副作用 |
---|---|---|
FOLFOX療法★ | ・フルオロウラシル(5-FU) ・オキサリプラチン ・ホリナート(ロイコボリン)またはレボホリナート ※5-FUの効果を高める | 吐気・嘔吐、食欲不振、末梢神経障害(手足のしびれなど)、白血球・好中球減少など |
CAPOX療法★ (XELOX療法) | ・カペシタビン(ゼローダ) ・オキサリプラチン | 骨髄抑制、手足症候群、末梢神経障害(手足のしびれなど) |
SOX療法★ | ・S-1 ・オキサリプラチン | 末梢神経障害、骨髄抑制、下痢、吐気・嘔吐、食欲不振など |
FOLFIRI療法★ | ・フルオロウラシル(5-FU) ・イリノテカン ・ホリナート(ロイコボリン)またはレボホリナート ※5-FUの効果を高める | 吐気・嘔吐、下痢、食欲不振、脱毛、骨髄抑制など |
IRIS療法★ | ・S-1 ・イリノテカン | 下痢、吐気・嘔吐、食欲不振、脱毛、骨髄抑制など |
CAPIRI療法★ | ・カペシタビン ・イリノテカン | 吐気・嘔吐、下痢、食欲不振、脱毛、骨髄抑制、手足症候群など |
FTD/TPI療法 | FTD/TPI | 吐気・嘔吐、食欲不振、骨髄抑制など |
UFT+LV療法 | ・テガフールウラシル(UFT) ・ホリナート(ロイコボリン) ※UFTの効果を高める | 骨髄抑制、肝硬変、下痢、口内炎など ※副作用の発現頻度が明確となる調査は実施されていない。 |
5-FU+I-LV療法 | ・フルオロウラシル(5-FU) ・レボホリナート ※5-FUの効果を高める | 口内炎、下痢、骨髄抑制など |
Cape療法 | カペシタビン | 吐気・嘔吐、食欲不振、骨髄抑制、色素沈着、肝・腎機能障害など |
S-1療法 | テガフール ギメラシル オテラシルカリウム(S-1) | 色素沈着、骨髄抑制、肝機能障害、食欲不振、吐気・嘔吐、口内炎、味覚異常、下痢など |
FOLFOXIRI療法 | ・フルオロウラシル(5-FU) ・オキサリプラチン ・イリノテカン ・ホリナート(ロイコボリン) ※5-FUの効果を高める | 吐気・嘔吐、食欲不振、骨髄抑制、下痢、末梢神経症状、脱毛、口内炎など |
●分子標的治療薬
薬剤名(商品名) | 種類 | 備考 |
---|---|---|
ベバシズマブ(アバスチン) | 抗VEGF抗体 | |
アフリベルセプト(ザルトラップ) | 抗VEGF抗体 | |
ラムシルマブ(サイラムザ) | 抗VEGFR-2抗体 | |
セツキシマブ(アービタックス) | 抗EGFR抗体 | RAS陰性の野生型のみ適応 |
パニツムマブ(ベクティビックス) | 抗EGFR抗体 | RAS陰性の野生型のみ適応 |
レゴラフェニブ(スチバーガ) | マルチキナーゼ阻害薬 | |
エンコラフェニブ(ビラフトビ) | BRAF阻害薬 | BRAF陽性のみ適応 |
ビニメチニブ(メクトビ) | MEK阻害薬 | BRAF陽性のみ適応 |
エヌトレクチニブ(ロズリートレク) | TRK阻害薬 | NTRK陽性のみ適応 |
ラロトレクチニブ(ヴァイトラックビ) | TRK阻害薬 | NTRK陽性のみ適応 |
ベルツズマブ(パージェタ) | 抗HER2抗体 | HER2陽性のみ適応 |
トラスツズマブ(ハーセプチン) | 抗HER2抗体 | HER2陽性のみ適応 |
●免疫チェックポイント阻害薬
薬剤名(商品名) | 種類 | 備考 |
---|---|---|
ペムブロリズマブ(キイトルーダ) | 抗PD-1抗体 | MSI陽性またはTMB-Highにのみ適応 |
ニボルマブ(オプジーボ) | 抗PD-1抗体 | MSI陽性のみ適応 |
イビリムマブ(ヤーボイ) | 抗CTLA-4抗体 | MSI陽性のみ適応 ※ニボルマブとの併用 |
主な副作用への対処方法
細胞傷害性抗がん剤はもちろん、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬にも副作用はあります。
自身で対処できる副作用もあれば、我慢せずに病院に連絡した方が良い副作用もあるので、担当医や看護師から十分に説明を受け、不明点はそのままにしないようにしましょう。
副作用 | 対処法 |
---|---|
吐き気・嘔吐、食欲不振 | ・予防的に吐き気止め薬を服用する ・一度ではなく少量ずつ複数回に分けて消化の良い食事を摂る ▶食欲不振の対処法 ▶吐き気・嘔吐の対処法 |
末梢神経障害 | ・冷たいものを触ったり、冷たいものの飲食を控える ・体を冷やさない ・長引く場合は担当医に相談する ▶末梢神経障害の対処法 |
高血圧 | 毎日、決まった時間に血圧を計測して記録し、担当医に報告する ※自覚症状が出にくいので、副作用に高血圧がある場合は注意する |
骨髄抑制 | ・免疫力が落ちているため感染症予防のため人混みを避ける ・手洗いうがいを行う ▶骨髄抑制の対策 |
下痢 | ・整腸剤を服用する ・脱水を防ぐために温かい飲み物をこまめに飲む ▶下痢の対処方法 |
脱毛 | ・洗髪の時に爪などで頭皮を傷つけないようにする ・就寝時にシャワーキャップを被る |
ある程度の副作用は我慢してもよいですが、強い痛みや全く食事が摂れないなどはQOL(生活の質)を大きく低下させてしまい、治療中断にもなりかねません。
副作用はないに越したことはありませんが、スケジュール通りに治療を進めていくためにも副作用が出た時はうまく対処することが大切です。
そのためにも、担当医には診察時に出ている副作用の症状を具体的に説明し相談するようにしましょう。
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